「チンチラに去勢手術は必要か?」と悩んでいる飼い主さんに向けて、実際のケースの紹介を交えながら去勢のメリット・デメリット、手術の必要性、注意点を獣医師の視点からわかりやすく解説します。


チンチラに去勢手術は必要なの?

結論から言うと、チンチラの去勢手術は必須ではありません
ただし、飼育環境や個体の性格、繁殖のリスクによっては検討すべきケースもあります

犬や猫とは違い、チンチラは発情期の行動が比較的穏やかで、強いマーキングや攻撃性が出る個体は少ないため、単独飼育で問題行動がなければ、手術は不要とされることが多いです


チンチラを去勢するメリット

1. 望まない繁殖を防げる

オスとメスを同居させている場合、意図しない繁殖を防ぐことができます。特に多頭飼育やブリーディングをしない家庭では重要なポイントです。

2. 性格の安定化

一部のオスでは、性ホルモンによるマウンティングや攻撃行動が見られることがあります。去勢によってこれらの行動が穏やかになる可能性があります。

3. 生殖器疾患の予防

精巣の腫瘍や炎症、前立腺のトラブルなど、生殖器に関わる疾患の予防につながることもあります。
当院調べでは、2025年現在チンチラの去勢をした時とそうでない時の寿命を比較した研究はありません。


チンチラを去勢するデメリット・リスク

1. 麻酔・手術のリスクがある

チンチラはデリケートな体質のため、全身麻酔や手術に伴うリスクが犬猫より高いとされています。麻酔管理の経験が豊富な獣医師に相談する必要があります。
また、チンチラなどの齧歯類の手術では「鼠径ヘルニア」といって体の組織が本来あるべき場所から飛び出してしまう状態になりやすいとされています。

2. 必要性がないケースが多い

単独飼育や、特に問題行動のないオスであれば、去勢手術によるメリットが少ないため、無理に手術を受けさせる必要はありません


去勢を検討すべきケースとは?

以下のような場合には、去勢を前向きに検討してもよいでしょう:

  • オス・メスを同居させており、繁殖を望まない
  • 性的行動やマウンティングが強く、生活に支障がある
  • 獣医師から生殖器の病気予防として提案された場合

去勢手術を受ける際の注意点

  • 小動物に強い獣医師のいる動物病院を選ぶことが大切です。
  • **手術前検査(血液検査や画像検査)**を行い、麻酔リスクを最小限にしましょう。
  • 手術後は体温管理・食欲管理・感染対策が必要です。

まとめ:チンチラの去勢手術は「必要なケースのみ慎重に」

チンチラに去勢手術は絶対に必要というわけではありません。
繁殖の予定がなく、性格的な問題もなければ無理に手術をする必要はないでしょう。
一方で、多頭飼育や行動面の問題がある場合は、獣医師と相談しながら慎重に検討することが大切です。


症例報告 チンチラの去勢手術

今回はチンチラを男の子と女の子の二匹のチンチラちゃんを保護したため、手術することになりました。
麻酔をかけて導入し手術を行います。
こちらが実際の手術の画像です。

まずは麻酔をかけて、感染を防止するために毛刈りをしてゆきます。

皮膚を切って精巣露出します。

出血しないように血管を糸で縛ってゆきます。その後縫合して終了です。
この子は1泊入院し、退院しました。
退院の際は傷口をかじらないようにするためのエリザベスカラーをつけてもらいました。
チンチラ用のカラーは販売されていないため、既製品をカットして使用します。
その後薬を飲んでもらい1週間後来院してもらいました。

こちらが手術を終えて1週間経過した後の写真です。
問題なくくっついていたため抜糸を行いました。

無事に抜糸を終え治療終了となりました。
チンチラの去勢手術は当院でも実施可能ですが、曜日や日程に制限があります。
詳しくはお電話にてご相談ください。

よくある質問(FAQ)

Q. チンチラは避妊手術もできるの?
A. メスのチンチラの避妊手術は可能ですが、オス以上に手術リスクが高く、一般的には行われないことが多いです。

Q. 去勢後、性格は変わるの?
A. 個体差がありますが、性的衝動が減り、落ち着く個体もいます。ただし劇的な性格変化は期待しないほうがよいでしょう。