今回は見た目が地味なのに病理学的には悪性の乳腺腫瘍の症例です。

シー・ズー 13歳 避妊メス(7歳で避妊)

半年程前に左側の第4乳腺付近に約1cmのしこりをオーナー様が発見。

針を使った吸引生検では、良性と思われました。

すぐに切除する予定でしたが、術前検査で肝臓の数値が高く、投薬治療をしていたところ第5乳腺尾側にまた1cmほどのしこりが発見されました。

この半年間で最初に発見したしこりの大きさに変化はありませんでした。

乳腺の外貌です。

左側の乳腺に腫瘤がありますが(矢印)、外観上は目立たずよくわかりません。

上が最初に発見されたもの、下がその半年後に発見されたものになります。

この症例は、左側第3~5乳腺の切除を行いました。

病理検査の結果、第4乳腺尾側(上)は悪性の乳腺腫瘍、第5乳腺尾側(下)は鼠経リンパ節への転移病変でした。

乳腺腫瘍を初期に発見するには日ごろから触って確認する必要があります。

良性の乳腺腫瘍は、小さくて成長が遅い、平滑な表面(つるつるしている)などの特徴があります。

逆に悪性の場合は、成長が速いため大きく、不規則な表面(でこぼこ)しています。

一般に犬の乳腺腫瘍は良性と悪性が半々と言われますが、小型犬が多い本邦では7割が良性というデータもあります。

ただし、今回のように術前の細胞診検査で良性と予想されても、病理検査の診断で悪性と出てしまうケースは意外と多く、良性乳腺腫瘍の的中率は6~7割と低いのが実情です。

すなわち、良性のようでも可能ならば早期に外科切除した方がよいかもしれません。

同じく膀胱結石も半年前から確認され、血尿を繰り返していたため、療法食による治療を行なっていましたが症状改善せず。

手術部位が同じであることから、今回は同時に手術を行うことになりました。

手術後は良好な経過をたどり、元気に過ごしてくれています。