猫の肥大型心筋症(HCM)とは?

肥大型心筋症(HCM)は、猫に最も多く見られる心臓病の一つで、心臓の筋肉(心筋)が異常に厚くなり、血液を正常に送り出せなくなる病気です。
特にメインクーンやラグドール、アメリカンショートヘア、ペルシャなどの品種で発症しやすいとされていますが、ミックス猫でも発症することがあります。

猫の肥大型心筋症の症状

HCMは初期の段階では無症状のことが多く、病気が進行すると以下のような症状が現れます。

• 呼吸が荒くなる(開口呼吸・息苦しそうにする)
• 食欲不振や元気消失
• 失神(ふらつく・突然倒れる)
• 後肢の麻痺(血栓が原因で起こる)
• 咳やチアノーゼ(舌や歯茎が青紫色になる)

特に、後肢が突然動かなくなったり、冷たくなる場合は「動脈血栓塞栓症」の可能性があり、緊急対応が必要です。

猫の肥大型心筋症の原因

HCMの明確な原因はまだ解明されていませんが、以下の要因が関与していると考えられています。

1. 遺伝的要因

メインクーンやラグドールなどの品種では、特定の遺伝子変異がHCMと関連していることが判明しています。

2. 加齢

高齢になるほど発症リスクが高まる傾向があります。

3. 高血圧や甲状腺機能亢進症

これらの疾患が心臓に負担をかけ、HCMを悪化させる可能性があります。

猫の肥大型心筋症の診断方法

HCMはレントゲン検査や超音波検査(心エコー)、心電図検査などを組み合わせて診断されます。

• 超音波検査(心エコー)
→ 心筋の厚みや血流の異常を確認

• レントゲン検査
→ 心臓の肥大や肺の異常をチェック

• 心電図検査
→ 不整脈の有無を確認

• 血液検査(BNP検査)
→ 心臓に負担がかかっているかを評価

猫の肥大型心筋症の治療法

HCMの治療は症状を和らげ、病気の進行を遅らせることが目的となります。以下のような治療法が一般的です。

1. 内科治療(薬物療法)

• β遮断薬(アテノロール):心拍数を抑え、心臓の負担を軽減

• カルシウム拮抗薬(ジルチアゼム):心筋の硬化を抑制

• ACE阻害薬(エナラプリル):血圧を下げ、心臓への負担を軽減

• 抗血栓薬(クロピドグレル、アスピリン):血栓予防

2. 外科的・特別な治療

現時点では、猫のHCMに対する外科的治療は一般的ではありませんが、進行を抑えるための食事管理やストレスの軽減が推奨されます。

猫の肥大型心筋症の予防方法

HCMは完全に予防することが難しい病気ですが、以下の方法でリスクを軽減できます。

1. 定期的な健康診断(特に心エコー検査)

2. 適切な体重管理(肥満を防ぐ)

3. ストレスの少ない生活環境を整える

4. 遺伝的要因の強い猫は繁殖を避ける

5. 高血圧や甲状腺機能亢進症の早期発見・治療

まとめ

猫の肥大型心筋症(HCM)は早期発見・適切な治療で生活の質を向上させることが可能です。
無症状でも定期検診を受け、心臓の状態をチェックすることが大切です。