犬と猫の肥満細胞腫(Mast Cell Tumor, MCT)の違いについて詳しく説明します。
犬の肥満細胞腫
- 頻度と発生部位:
- 犬では肥満細胞腫は皮膚腫瘍の中で最も一般的なものの一つで、全体の約16~21%を占めます。
- 主に皮膚に発生し、四肢や体幹、頭部などに好発します。まれに内臓(脾臓、肝臓、腸)にも発生します。
- 病理とグレード:
- Patnaikの分類に基づくグレード(I~III)があります。グレードIは良性で転移のリスクが低いのに対し、グレードIIIは悪性で転移のリスクが高いです。
- 最近では、Kiupelの分類も使用されることがあります。
- 治療:
- 外科的切除が第一選択です。完全切除が難しい場合、放射線治療や化学療法が併用されます。
- 使用される薬剤にはプレドニゾロン、ビンクリスチン、クロラムブシルなどがあります。また、Palladia(トセラニブ)という分子標的薬も有効です。
- 予後:
- 予後はグレードと腫瘍の位置に依存します。グレードIの腫瘍は外科的に完全切除できれば予後良好ですが、グレードIIIの腫瘍は予後不良です。
猫の肥満細胞腫
- 頻度と発生部位:
- 猫では肥満細胞腫は比較的まれで、皮膚腫瘍の約7~21%を占めます。
- 皮膚型と内臓型に大別されます。皮膚型は頭部、首、体幹に多く見られますが、内臓型は脾臓や腸に発生します。
- 病理とタイプ:
- 皮膚型には肥満細胞型と異型型の2つのタイプがあります。肥満細胞型は比較的良性で、異型型はより悪性です。
- 内臓型はしばしば悪性で、全身に広がりやすいです。
- 治療:
- 皮膚型の場合、外科的切除が主な治療法です。内臓型の場合は、脾臓摘出や化学療法が行われることがあります。
- 内臓型の治療には、プレドニゾロンやシクロホスファミドが使われることがあります。
- 予後:
- 皮膚型は一般に予後良好ですが、内臓型は予後不良です。特に脾臓に発生した場合、早期に摘出しないと生存期間が短くなります。
主な違いのまとめ
- 発生頻度: 犬の方が猫よりも頻度が高い。
- 発生部位: 犬は主に皮膚に、猫は皮膚と内臓に発生。
- 病理分類: 犬はグレードで分類され、猫は皮膚型と内臓型に大別される。
- 治療法: 両者とも外科的切除が主流だが、使用される薬剤や治療のアプローチに違いがある。
- 予後: 犬はグレードに依存し、猫は発生部位によるが、猫の内臓型は特に予後が悪い。
これが犬と猫の肥満細胞腫の主要な違いです。