愛犬・愛猫の健康を守るためのデンタルケアの重要性
ペットの口腔ケアは、彼らの健康にとって非常に重要です。
犬や猫は歯周病が発生しやすく、口腔内だけでなく全身にも悪影響を及ぼす可能性があります。
以下では、口腔ケアの重要性について説明します。

1. 歯周病発生のメカニズム

ペットの口腔環境

犬や猫の口腔内には、500〜800種類の細菌が存在し、唾液1ml中には1億個もの細菌が含まれていると言われています。
なぜこれほど細菌が多いのかというと、口腔内は細菌が繁殖するには好都合な条件が揃っているからです。


口の中の湿った湿潤状態
また、体温による温度

たとえば、夏にお弁当が腐りやすくなるのは、細菌が繁殖しやすい条件が揃いやすいからです。
これらの条件から、口腔内は細菌にとって繁殖しやすい環境にあります。

歯周病の原因

細菌が繁殖しやすい汚い環境の口腔内ですが、
なぜ病気にならないかというと、
私たちの体には何重もの防御機構、
つまり免疫システムがあるからです。
しかし、近年はペットの寿命が延びたことや、ペットフード、おやつ等が増えたことにより*歯周病のリスクが高まっています。
*歯周病とは歯周病関連細菌(Porphyromonas gulae など)によって歯肉のみならず、歯根膜、セメント質および、歯槽骨の歯周組織まで炎症が及ぶ疾患である。

細菌の塊である歯垢が長時間放置されると唾液中のミネラルと結びつき歯石が形成されます。
歯垢・歯石の付着率が高ければ高くなるほど歯周病の発生率も高くなるとされています。
*特に超小型犬(〜5kg)では1歳未満の90%は既に歯周病により歯槽骨が吸収されているというデータもあります。
*Niemiec BA.オーラベット発売1周記念セミナー プロシーディング, ベーリンガーインゲルハイムジャパン株式会社,

歯周病の進行

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歯周病が引き起こす健康問題


歯周病が引き起こす健康問題歯周病が進行すると、歯肉炎から始まり、
歯槽骨の吸収や顎骨の骨折、さらには*全身性疾患(心臓病や腎臓病など)につながることがあります。
小型犬では特に歯周病が発生しやすく、3歳以上の犬や猫の80%以上が歯周病に罹患しているとされています。
*Pavlica, Z., Petelin, M., Juntes, P., et al. (2008). Periodontal Disease Burden and Pathological Changes in Organs of Dogs. Journal of Veterinary Dentistry, 25, pp. 97-105.

・根尖周囲病巣(こんせんしゅういびょうそう)
歯の根の先に膿の袋ができることです。
歯周病によって歯の根の周りに炎症が広がり、そこに細菌がたまって膿が出てきてしまいます。
この状態が続くと、歯がグラグラして痛みが出たり、さらに悪化すると歯を失うことがあります。

口腔鼻腔瘻(こうくうびくうろう)
口の中と鼻が繋がってしまう穴のことです。
歯周病が進行して、歯を支えている骨が壊れてしまうと、口の中と鼻の中が繋がる穴ができることがあります。
これが起こると、食べ物や液体が鼻に入ってしまい、くしゃみや鼻水が止まらなくなります。

外歯瘻(がいしろう)
歯の周りから外に向かって膿が出る穴のことです。
歯周病が進行して、歯の周りに細菌が増えると、膿がたまり、それが外側に出てくることがあります。
これにより、頬や顎の外側に膿が漏れて腫れたり、出血することがあります。

内歯瘻(ないしろう)
歯の内部から口の中に膿が出る穴です。
これは、歯周病が進んで歯の内側で炎症が酷くなり、膿が歯の中から口の中に出てしまう状態です。
これも痛みや腫れの原因となります。

顎骨骨折(がっこつこっせつ)
顎の骨が折れることです。歯周病が酷くなると、歯を支えている骨が弱くなり、
少しの力で顎の骨が折れてしまうことがあります。
特に小型犬では、歯周病によって顎の骨が脆くなり、骨折するケースが多く見られます。

2. 予防 デンタルケア

毎日の歯磨きの重要性
犬や猫の歯垢は、犬では3〜5日、猫では1週間で歯石に変わります。
歯石に変わると歯磨きでは取り除けなくなるため、毎日の歯磨きが非常に重要です。
理想的には1日2回のブラッシングが推奨されており、特に歯周ポケットの清掃が大切です。
無理せず、少しずつ慣らしながら行い、楽しみながらケアをすることが成功の鍵です。
毎日の歯磨きを習慣にしましょう。


歯磨きのタイミング
歯垢が歯石になる前に毎日ケアをすることが大切で、毎日1回、できれば2回歯を磨くのが理想的です。
もし毎日できなくても、週に3回以上は磨いてあげるようにしましょう。
歯垢は放っておくと数日で硬くなって歯石になります。

正しい歯磨きの方法
ペット専用の歯ブラシやフィンガーブラシを使用し、優しく歯と歯肉をマッサージするように磨きます。
ペットの歯磨きは、人間と少し違うので、最初は少しずつ慣れさせることが大切です。
以下の手順で進めましょう。

①歯ブラシを歯に軽く当てる
力を入れすぎず、毛先が少したわむ程度の力で、歯と歯茎の境目に当てます。ブラシは45度の角度で行うと効果的です。

②短い動きを繰り返す
前後に細かく動かして、1本1本丁寧に磨いていきます。

③褒めてあげる
途中で褒めたり、おやつをあげて楽しい時間だと覚えさせます。

デンタルケア用品
ペット専用の歯磨き用品を選びましょう。人間用のものはペットにとって害になるものもあるため使わないでください。

•歯ブラシ
最近ではペット用の歯ブラシの種類も増え、色々な物が発売されています。
ペットの歯の状態に合わせて適切なものを選びましょう。


•歯磨き粉:ペット専用のものを使います。

味付きの製品もあるので、ペットが嫌がらないように工夫すると良いです

その他のデンタルケア用品

歯磨きが難しい場合や補助的に使いたいときには、次のようなアイテムもおすすめです。
デンタルガム
噛むことで歯垢を落としやすくするおやつです。
臼歯(奥歯)を特に綺麗にすることができます。
デンタルシート、ガーゼ
歯ブラシが難しい場合には、指に巻きつけて使えるシートや、ガーゼで歯を拭いてあげる方法もあります。
水で濡らして使うと効果的です。
デンタルスプレー
スプレータイプのケア用品で、口に直接吹きかけるだけで歯垢の形成を防ぐ効果があります。

3.歯周病の治療

歯石除去の必要性

犬や猫の歯石は、毎日のブラッシングでは取り除くことができません。
前述の通り歯石が付着したままにしておくと、歯周病が進行し、歯肉炎や歯槽骨の破壊が起こり、さらに全身に影響を与えることもあります。
そのため、定期的に動物病院で歯石除去を行うことが大切です。

定期的な歯石除去を行うことで、歯周病の進行を防ぎ、ペットの口腔内を健康に保つことができます。
研究によると、年に1回の歯石除去を行うことで、*犬の死亡リスクが約18.3%低下するというデータもあります。
*Urfer SR, Wang M, Yang M, et al. (2019). Risk factors associated with lifespan in pet dogs evaluated in Primary Care Veterinary Hospital. Journal of American Animal Hospital Association (JAAHA), pp. 130-137.

4.まとめ

歯磨きはペットの健康を守るための重要な習慣です。日々のケアによって、歯周病のリスクを大幅に減らすことができます。
大切な家族の一員であるペットの健康を守るために、ぜひ毎日の歯磨きを続けてください。