
SFTSは、犬や猫にも感染する可能性のある重症化に注意が必要な感染症です。
検査によってSFTSへの感染が確認された場合、どのような治療が行われているのか、不安に感じる飼い主さんも多いのではないでしょうか。
現在、SFTSには確立された特効薬がないため、感染した犬や猫の症状や全身状態に合わせた対症療法が中心となります。また、猫では重症化しやすい傾向があるほか、人でも重症化する可能性があるため、感染後の対応には注意が必要です。
今回は、SFTSと診断された場合に行われる治療や入院・治療期間、治療費について解説します。また、犬と猫でみられる重症化の傾向や、飼い主さんが注意したいポイントについても紹介します。
SFTSと診断された場合の治療法

SFTSには確立された特効薬がないため、感染した犬や猫の症状や全身状態に合わせた対症療法が中心となります。また、症状によっては入院による治療や管理が必要になる場合もあります。
ここでは、SFTSの治療方法や入院での治療、治療費用について詳しく解説します。
SFTSには確立された特効薬がない
SFTSには、この薬を飲めば感染そのものを治せるという確立した特効薬がありません。
SFTSはウイルスによる感染症ですが、現時点ではSFTSウイルスを直接治療するための特効薬が確立していないためです。
そのため、感染した犬や猫では、症状や全身状態を観察しながら必要な治療を行い、回復をサポートします。
治療の具体的な内容については、次の「治療は症状に合わせた対症療法が中心」で詳しく解説します。
治療は症状に合わせた対症療法が中心
SFTSの治療では、感染した犬や猫にみられる症状や全身状態に合わせて対症療法を行います。
SFTSには確立された特効薬がないため、感染そのものを直接治療するのではなく、現れている症状を和らげながら、体力の回復をサポートすることが重要です。
具体的には、以下のような治療が行われます。
- 嘔吐や下痢による脱水症状がみられる場合:点滴などによる水分補給
- 食欲が低下している場合:栄養状態を維持するための栄養サポート
- 呼吸状態が悪化している場合:酸素療法などによる呼吸管理
このように、症状や全身状態を観察しながら、その時点で必要な治療を行い回復をサポートしていきます。
症状に応じて入院での治療を実施
SFTSでは、症状が強い場合や、治療を行ってもなかなか改善がみられない場合に、入院での治療を行うことがあります。
SFTSでは、発熱や食欲低下、嘔吐、下痢などの症状がみられることがあり、状態によっては自宅だけでは十分な対応が難しくなる場合があるためです。
以下のような場合は入院での治療を検討することがあります。
- 脱水が強く、継続的な水分補給が必要な場合
- 食欲が戻らず、管での栄養管理が必要な場合
- 嘔吐や下痢などの症状が続いている場合
- 全身状態が急速に悪化している場合
- 治療を続けても改善がみられない場合
予後が悪い場合には安楽死を選択するケース
SFTSは、治療を行っても十分な改善がみられず、予後が悪くなるケースもあります。症状や全身状態によっては、動物の苦痛やQOL(生活の質)などを考慮し、獣医師と治療方針について慎重に相談することが大切です。
最悪の場合には、治療を継続することが難しく、安楽死を選択肢として検討するケースもあります。ただし、安楽死はすべての感染動物で行われるものではなく、動物の状態などを踏まえて獣医師と飼い主さんが十分に協議したうえで判断されます。
SFTSでは、このような治療が難しいケースも想定されるため、感染してから治療するだけでなく、そもそも感染を防ぐことが最も重要です。
SFTSの治療費の目安
SFTSの治療費は、症状の程度や必要な治療、入院期間によって異なります。
現時点では、東京都内でSFTSを発症した犬や猫は確認されておらず、実際の治療費について明確な目安はありません。ただし、SFTSの治療法は確立された特効薬がなく、点滴や酸素療法などの対症療法を中心に行うことから、治療費はおおむね15万〜25万円程度になると考えられます。
ただし、検査内容や症状、入院期間などによって費用は変わるため、実際に必要となる治療費については動物病院で確認するようにしましょう。
猫と犬で異なる重症化の傾向

SFTSは犬と猫のどちらにも感染しますが、重症化の傾向に違いがあります。
特に猫では重症化に注意が必要なため、感染が確認された場合には、症状や全身状態を観察しながら慎重に治療を行うことが大切です。
ここでは、犬と猫でみられる重症化の傾向について解説します。
猫では重症化に注意が必要
SFTSに感染した猫では、昨日まで普段通りに過ごしていたにもかかわらず、急に発熱や食欲低下などの症状が現れることがあります。症状が現れた後に短時間で全身状態が悪化するケースもあるため注意が必要です。
ただし、症状の現れ方や進行の速さには個体差があり、すべての猫が同じ経過をたどるわけではありません。症状が出た直後は比較的元気に見えても、その後に状態が変化する可能性があります。
特に、急に元気や食欲がなくなった場合は注意しましょう。発熱や嘔吐、ぐったりするなどの変化がみられた場合には、すぐに獣医師に相談することが大切です。
SFTSが疑われる場合には、症状の変化を注意深く観察し、必要な検査や治療につなげることが重要です。
犬では比較的軽症の場合もありますが注意が必要です
SFTSに感染した犬では、猫と比べて比較的軽症で経過する場合もあります。ただし、犬でも重症化する可能性があるため、決して油断できません。
症状は犬でも大きく変わらず、発熱や元気・食欲の低下、嘔吐などがみられることがあります。症状の程度や進行の速さには個体差があるため、軽い症状に見えても経過を観察することが大切です。
特に、元気や食欲が戻らない、嘔吐などの症状が続く、ぐったりしているといった変化がみられる場合には、すぐに獣医師に相談しましょう。
犬でも症状が進行する可能性があるため、SFTSが疑われる場合には状態の変化を注意深く観察し、必要な検査や治療につなげることが重要です。
SFTS感染後に注意したいこと
SFTSに感染した犬や猫では、治療だけでなく、その後の体調管理や飼い主さん自身の感染対策にも注意が必要です。
また、SFTSは人に感染し、重症化するケースも報告されています。
ここでは、SFTS感染後に知っておきたい人への感染リスクや、感染した犬や猫を守るために飼い主さんができることを解説します。
人でも重症化する可能性がある
SFTSを発症した犬や猫の血液、唾液、尿、便などの体液や排泄物に直接触れた場合は、感染に注意が必要です。
実際に、感染した猫に咬まれたことや、発症動物の体液に直接触れたことが原因と考えられる人への感染例も報告されています。
人が感染すると、発熱や倦怠感、食欲不振、嘔吐、下痢などの症状がみられ、重症化することもあります。特に高齢者では重症化しやすいため、十分な警戒が必要です。
そのため、感染した犬や猫を看護する場合には、体液や排泄物に直接触れないよう注意することが大切です。
感染した犬や猫を守るために飼い主さんができること
SFTSに感染した犬や猫は、獣医師の指示に従いながら、体調の変化を注意深く観察することが大切です。症状が急変する場合もあるため、普段と違う変化を見逃さないようにしましょう。
また、看護をする際には、血液や唾液、尿、便などに直接触れないように注意する必要があります。排泄物などを処理するときは手袋を使用し、触れた後は手洗いを行うなど、感染対策を心がけましょう。
特に、以下のような変化がみられた場合には、獣医師へ相談しましょう。
- 元気や食欲がさらに低下した
- 嘔吐や下痢が続いている
- 水分がとれない
- ぐったりしている
- 呼吸状態に変化がみられる
感染した犬や猫の状態をよく観察しながら、必要な治療を継続することが回復につながります。飼い主さんだけで判断せず、獣医師の指示に従って看護することが大切です。
まとめ

SFTSには現時点で確立された特効薬がないため、感染した犬や猫では、症状や全身状態に合わせた対症療法が中心となります。症状が強い場合や改善がみられない場合には、入院による治療や管理が必要です。
また、猫では重症化しやすい傾向にある一方、犬でも重症化する可能性があります。感染後は体調や症状の変化を観察し、獣医師の指示に従って治療や看護を行うことが大切です。
SFTSは人にも感染する可能性があるため、感染した犬や猫の血液、唾液、尿、便などの体液や排泄物に直接触れないように注意しましょう。飼い主さん自身に体調の変化がみられた場合には、感染した動物と接触があったことを医療機関へ伝えることも大切です。
また、SFTSは予後が悪くなるケースもあり、治療を行っても改善がみられない場合には、安楽死を選択肢として検討するケースもあります。こうした事態をさけるためにも、SFTSは感染してから治療するだけでなく、そもそも感染させないことが最も重要です。
次回、犬や猫をSFTSに感染させないために飼い主さんができる予防策について詳しく解説します。

