前十字靭帯が断裂した場合に実施する手術の一つ関節外法(関節外制動法、ラテラルスーチャー)の症例報告です。
手術画像が多数ありますので苦手な方は閲覧を控えていただけたらと思います。

関節外法(関節外制動法、ラテラルスーチャー)とは

断裂した靱帯の代わりに外側から人工の糸をかけて靱帯の代わりにする手術です。

「人口の靱帯」という表現から誤解されがちなのですが、
ラテラルスーチャーは糸が切れる前提で行われる手術であり、小さい小型犬でも将来的には糸が切れるあるいは緩んでゆきます。
しかしその人口の糸が機能しなくなるまで、出来るだけ正しい位置で関節の安定させ、その間に、関節包や周りの組織の繊維化をする手術です。
つまり、「ずれた骨を一時的に元の位置に戻して、天然のギプスをつくる手術」です。

ですので体重が重い動物にこの手術を行ったとしても、簡単に糸が緩んでしまい、十分な繊維化が得られない可能性が高いです。
そうなると命をかけて全身麻酔をし、膝を切開して感染のリスクに晒すことの方が、得られるメリットを超えてしまう可能性があります。
また、単に人口の糸をかけるだけだなく、損傷した半月板や靭帯の除去も行ってゆきます。

トイプードル12歳 4.5kg 突然右足を上げっぱなしにしてしまったとのことで来院しました。
レントゲンを撮影して、右前十字靭帯断裂と診断しました。
後日当院にて手術することとなりました。

これ以降は手術写真です。

脚をドレーピングします。

外側の筋膜と関節包を切開し、膝関節を露出させます。

この時点で半月板の損傷がないかを確認します。
→本症例では半月板の損傷はありませんでした。

こちらが取り除いた前十字靭帯です。

本当にごく微量ですができる限り取り除いてゆきます。

滅菌された針で脛(スネ)の骨に穴をあけ、糸を通してゆきます。

金属の留め具をつけて、膝の曲げ具合を見ながらロックする強度を調整します。

金属の留め具をロックします。

縫合して終了です。

飼い主様よりこの子は退院2日目には自分で足をつき始めたそうです。
また手術後のチェックでの良好な経過をたどっています。
この手術は
糸を通す角度や糸の締め具合、骨のどこに糸を通す穴を開けるかなど術者のセンスが問われる手術でもあります。

現在はリハビリを続け良好な経過をたどっています。
当院では費用や設備など、様々な理由でTPLOをすることができない場合にこちらの手術を行っております。