猫も人間と同じように、事故に遭ったり、病気になったりすることがあります。

特に、交通事故や高いところからの落下事故によって「骨盤狭窄(こつばんきょうさく)」という状態になることがあります。これは、猫の骨盤の一部が狭くなってしまう状態のことです。

この記事では、猫の骨盤狭窄について詳しく解説し、その原因や症状、治療法、そして予防策についてお伝えします。

骨盤狭窄って何?

猫の骨盤狭窄は、骨盤の骨折が原因で骨盤の中の空間が狭くなる状態です。

これにより、腸が圧迫されて便秘や健康問題を引き起こします。

特に重症の場合、猫は「巨大結腸症(きょだいけっちょうしょう)」という便秘がひどくなる病気にかかることがあります。この状態は早期発見と治療が重要です。

骨盤狭窄の症状

猫の骨盤狭窄が進行すると、いくつかの明確な症状が現れます。

主な症状は便秘です。骨盤が狭くなることで腸が圧迫され、便がスムーズに排出されなくなります。便秘が続くと、猫はトイレで苦しむ姿勢を見せることがあります。

さらに、骨盤狭窄が進行すると、歩行困難や歩き方がぎこちなくなることがあります。

また、痛みを伴うことも多く、猫が鳴いて痛みを訴えることもあります。

その他の症状としては、食欲不振や体重減少が挙げられます。便秘による消化不良が原因で、食欲が低下し、体重が減少することがあります。

これらの症状に気づいたら、早めに動物病院を訪れることが大切です。

骨盤狭窄の診断方法

骨盤狭窄の診断には、獣医師による詳細な検査が必要です。

まず、猫の症状や病歴を確認し、触診で骨盤の異常を確認します。

次に、レントゲン検査が行われ、骨盤の状態を詳しく調べます。レントゲン画像を基に、骨盤の狭窄の程度や骨折の有無を評価します。

また、Sacral Index(SI)と呼ばれる指標を用いて、骨盤狭窄の客観的な評価も行います。これにより、適切な治療方針が決定されます。

骨盤狭窄の治療法

骨盤狭窄の治療には、保存的治療と外科的治療の二つがあります。

保存的治療は、軽度の骨盤狭窄の場合に選ばれ、手術をせずに安静にする方法です。骨が自然に治癒することを期待しますが、狭窄がひどい場合は、外科的治療が必要です。

外科的治療では、骨折した骨を手術で元の位置に戻し固定します。これにより、骨盤の狭窄を解消し、腸の通りを改善します。場合によっては、骨を広げる手術も行われます。

骨盤狭窄を防ぐためには?

猫の骨盤狭窄を防ぐためには、いくつかの予防策を講じることが重要です。

まず、外傷性の骨盤狭窄については、猫が高い場所から落ちないようにすることが大切です。室内飼いの場合、窓やベランダには猫が落ちないようにネットや柵を設置することをお勧めします。また、キャットタワーや家具の配置を工夫して、猫が安全に遊べる環境を整えることも重要です。

外に出る猫の場合は、交通事故に注意する必要があります。できるだけ車通りの少ない場所に出すようにするか、安全な場所でのみ遊ばせるようにしましょう。特に、夜間は猫が見えにくくなるため、外出を避けることが望ましいです。

定期的な健康診断を受けることも予防の一環です。健康診断では、骨盤の異常を早期に発見することができます。早期発見により、軽度の段階で治療を開始することが可能となり、重症化を防ぐことができます。

便秘や歩行の異常が見られた場合は、すぐに動物病院を受診することが大切です。

また、猫の運動不足も骨盤狭窄の原因となることがあります。適度な運動をさせることで、筋肉を強化し、骨の健康を保つことができます。おもちゃや遊びを通じて、猫が楽しく運動できる環境を整えましょう。

最後に、猫の食事にも十分な配慮が必要です。バランスの取れた食事は、骨や筋肉の健康を維持するために非常に重要です。発育不良に伴って起こる骨盤狭窄については、カルシウムやビタミンDを豊富に含む食事を提供することで、骨の強度を保つことができます。

まとめ

猫の骨盤狭窄は、早期発見と適切な治療が重要です。事故を防ぐための環境整備や定期的な健康診断、適度な運動と栄養管理が予防の鍵です。

もし、猫が便秘や歩行困難、痛みを訴える場合は、早めに動物病院に相談してください。私たちの動物病院では、専門的な診断と治療を提供し、あなたの大切な猫ちゃんの健康を守るお手伝いをいたします。ぜひ、お気軽にご来院ください!

参考文献

・板本和仁. 猫の骨盤狭窄の治療1. エビデンスを含めた骨盤狭窄の治療. 動物臨床医学 Journal of Animal Clinical Medicine , Vol. 31, No. 4, 2022

https://www.jstage.jst.go.jp/article/dobutsurinshoigaku/31/4/31_120/_pdf/-char/ja, (2024-07-27).