健康診断や体調不良時に血液検査を受けた際、「異常値があります」と説明されて不安になった経験はありませんか?
しかし、血液検査で参考範囲を外れているからといって、必ずしも病気や治療が必要な状態とは限りません。また、参考範囲内であっても注意が必要なケースもあります。

血液検査の結果を正しく理解するためには、数値だけでなく、その意味や見方を知ることが大切です。
本記事では、犬の血液検査における「異常値」の考え方や、獣医師がどのように検査結果を評価しているのかについて解説します。

犬の血液検査における異常値とは?

血液検査の結果には、それぞれの項目に参考範囲が設定されています。しかし、この参考範囲を外れているからといって、必ずしも病気とは限りません。

ここでは、血液検査の異常値がどのように判断されるのかを解説します。

血液検査の基準は正常値ではなく参考範囲

血液検査の結果に記載されている数値は、「正常値」ではなく「参考範囲(Reference Interval)」と呼ばれるものです。

参考範囲とは、健康と判断された犬の集団を調査し、そのうち95%の個体が含まれる範囲を示しています。
つまり、健康な犬であっても約5%は参考範囲から外れる可能性があるのです。

そのため、参考範囲を少し超えたからといって、すぐに病気と判断されるわけではありません。検査結果はあくまで診断の材料の一つとして考える必要があります。

検査項目が多いほど異常値は見つかりやすい

血液検査では、肝臓や腎臓、血糖値、炎症の有無など、多くの項目を同時に測定します。

そのため、健康な犬であっても複数の項目を調べることで、どこか一つの数値が参考範囲を外れることがあります。

実際に獣医師は、

  • どの項目が異常なのか
  • どの程度参考範囲から外れているのか
  • 他の項目との関連はあるのか

などを総合的に確認しながら評価しています。

単純に「赤字になっているから異常」と考えるのではなく、その数値がどのような意味を持つのかを判断することが重要です。

犬の血液検査で異常値が出ても治療しないことがある理由

血液検査で異常値が見つかると、すぐに治療をしなければ、と不安になるかもしれません。しかし、異常値が見つかっても経過観察となるケースは少なくありません。

ここでは、その理由について説明します。

一時的な体調や環境の影響を受けることがある

犬の血液検査の結果は、その日の体調や環境によって変化することがあります。

例えば、

  • 病院で緊張していた
  • 軽い脱水状態だった
  • 食事の影響を受けた
  • 運動後に検査を受けた

といった要因によって数値が変動することがあります。

そのため、軽度の異常で症状も見られない場合には、すぐに治療を開始せず、一定期間後に再検査を行って経過を確認することも珍しくありません。

数値だけでなく症状や身体検査も重要

獣医師は血液検査の結果だけで診断を行うわけではありません。

診察では、以下の要素も含めて総合的に評価します。

  • 元気や食欲の状態
  • 飲水量や排尿量
  • 身体検査の結果
  • レントゲン検査
  • 超音波(エコー)検査

例えば、肝臓の数値がわずかに高くても元気や食欲に問題がなく、他の検査でも異常が見られない場合は経過観察になることがあります。

一方で、血液検査の異常が軽度であっても症状が強く出ている場合には、追加検査や治療が必要になるケースもあるでしょう。

参考範囲内でも注意が必要なケース

血液検査では、参考範囲内から外れている数値だけが重要というわけではありません。場合によっては、参考範囲内であっても注意が必要なことがあります。

ここでは、獣医師が特に注目するポイントを解説します。

前回の検査結果から大きく変化している

近年は、参考範囲との比較だけでなく、その犬自身の過去のデータとの比較が重視されています。

例えばクレアチニンの値が、

  • 前回:0.7
  • 今回:1.3

だった場合、参考範囲内であっても大きな変化として注目されることがあります。

特に慢性腎臓病などの病気では、参考範囲内であっても徐々に数値が上昇していないかを確認することが重要です。

定期的な健康診断を受けておくことで、その子にとっての「いつもの数値」を把握しやすくなります。

犬種や年齢によって数値の見方が異なる

犬の血液検査では、犬種や年齢によって特徴的な数値を示すことがあります。
その背景には、血液検査の参考範囲の作成において、過去に実験動物として管理されていたビーグル犬のデータが基礎の一部として用いられてきた経緯があります。

例えば、一部の犬種では一般的な参考範囲と異なる傾向を示すことが知られています。
また、シニア犬では若い頃と比べて身体の状態が変化していくため、年齢に応じた評価が必要になることもあります。

そのため、検査結果を見る際には、

  • 犬種
  • 年齢
  • 生活環境
  • 既往歴

なども考慮しながら判断することが大切です。

血液検査結果を受け取ったときのポイント

血液検査の結果を正しく活用するためには、数値の見方や考え方を理解しておくことが大切です。

最後に、検査結果を受け取った際に意識したいポイントを紹介します。

数値だけで自己判断しない

インターネットで検査項目を調べると、不安になる情報を目にすることもあります。

しかし、同じ数値であっても症状や病歴によって評価は異なります。

検査結果に気になる点がある場合は、以下のように担当医に確認してみましょう。

  • この数値はどのような意味がありますか?
  •  治療は必要な状態ですか?

検査結果の背景を理解することで、不安の軽減にもつながります。

定期的な検査で変化を追うことが大切

血液検査は、一度の結果だけでなく継続して比較することに大きな意味があります。

特にシニア犬では、病気の早期発見や健康状態の把握のために定期的な健康診断が役立ちます。

過去の結果と比較することで、小さな変化にも気付きやすくなり、病気の早期発見や早期治療につながる可能性があります。

まとめ

犬の血液検査で参考範囲を外れていたとしても、それだけで病気や治療が必要と判断される
とは限りません。
血液検査の参考範囲は健康な犬の95%が入る範囲であり、健康な犬でも参考範囲から外れることがあります。

また、参考範囲内であっても、その犬自身の過去のデータや症状によっては注意が必要な場合もあります。

血液検査は診断に役立つ重要な検査ですが、あくまでも判断材料の一つです。不安な点がある場合は数値だけで自己判断せず、担当の獣医師に相談しながら愛犬の健康管理に役立てていきましょう。