犬の前十字靭帯(ACL anterior cruciate ligament)断裂は、非常に一般的な膝の怪我で、多くの犬種に影響を与えます。この記事では、犬の前十字靭帯断裂について、診断方法、2つの主な治療法、そして術後管理について詳しく説明します。

1. 前十字靭帯断裂とは

前十字靭帯は、犬の膝関節の安定性を保つ重要な靭帯です。この靭帯が断裂すると、膝の安定性が失われ、痛みや歩行困難が生じます。
犬の前十字靭帯断裂は急性の外傷や慢性的な変性によって発生することがあります。

2. 診断方法

前十字靭帯断裂の診断は、以下の手順で行われます:

視診と触診

  • 獣医師は犬の歩行や座り方を観察し、膝の腫れや痛みの兆候をチェックします。
  • 膝関節の安定性を評価するために、脛骨前方引き出しテストや脛骨圧迫テストを行います。これにより、前十字靭帯の断裂が疑われます。

画像診断

  • X線撮影:骨折やその他の膝関節の異常を確認しますが、前十字靭帯自体は映りません。

その他関節鏡や超音波検査での断裂した靱帯の確認をすることもありますが、一般的には触診と視診レントゲン検査とでの検査を行います。

3. 治療法

前十字靭帯断裂の治療には、手術的治療と非手術的治療の2つの主なアプローチがあります。

手術的治療法

  1. TPLO(脛骨高平部水平化骨切り術)
  • TPLOは、脛骨の角度を変更して膝関節の安定性を再構築する手術です。
  • この手術により、前十字靭帯が断裂していても、犬は正常に歩行できるようになります。

2.関節外制動法(関節外法 ラテラルスーチャー)

断裂した靱帯の代わりに外側から人工の糸をかけて靱帯の代わりにする手術です。

「人口の靱帯」という表現から誤解されがちなのですが、
ラテラルスーチャーは糸が切れる前提で行われる手術であり、小さい小型犬でも将来的には糸が切れるあるいは緩んでゆきます。
しかしその人口の糸が機能しなくなるまで、出来るだけ正しい位置で関節の安定させ、その間に、関節包や周りの組織の繊維化をする手術です。
つまり、「ずれた骨を一時的に元の位置に戻して、天然のギプスをつくる手術」です。

非手術的治療法

  1. 保存療法
  • 小型犬や軽度の断裂の場合、保存療法が選択されることがあります。
  • 安静、体重管理、鎮痛剤の投与、理学療法などが含まれます。
  • 完全な回復は期待できませんが、症状の軽減が目指されます。

4. 術後管理

手術後の管理は、犬の回復において非常に重要です。以下は術後管理の主なポイントです:

安静

  • 術後数週間は安静が必要です。運動を制限し、ケージレストを行います。

リハビリテーション

  • 理学療法士の指導のもとで、徐々に運動を再開します。水中トレッドミルやマッサージ、ストレッチなどが効果的です。

体重管理

  • 体重管理は膝の負担を軽減するために重要です。獣医師の指導に基づき、適切な食事と運動を行います。

定期検診

  • 術後は定期的に獣医師の診察を受け、回復の進捗を確認します。必要に応じてX線撮影や追加の理学療法が行われます。

痛み管理

  • 鎮痛剤や抗炎症薬の投与を続け、痛みを管理します。獣医師の指示に従い、適切な薬を使用します。

まとめ

犬の前十字靭帯断裂は、適切な診断と治療が求められる一般的な膝の怪我です。TPLOや関節外法などの手術的治療法は、高い成功率を誇り、犬の生活の質を大いに向上させます。術後の管理も重要で、安静、リハビリテーション、体重管理などを徹底することで、より早い回復が期待できます。
犬の前十字靭帯断裂に関する情報を理解し、適切な対応を行うことで、愛犬の健康と幸福をサポートしましょう。