動物病院でよくみる患者さんでかなり割合が多いのは誤食(異食症)です。
オーストラリアンラブラドゥードゥル(7カ月)10㎏近くのワンちゃんが
人用解熱鎮痛薬であるのカロナール(アセトアミノフェン)を半分誤食したとのことで来院されました。

飲んでしまったカロナール

カロナールを飲んでしまい放っておくとどうなるか

カロナールは熱を下げ、痛みの情報を伝達する物質を抑え鎮痛効果を得ることができます。

人の解熱鎮痛薬であるカロナールにはアセトアミノフェンが含まれています。
人用なので誤食をするとワンちゃん・ネコちゃんにとってはそもそも量が多くなってしまいます。
副作用に肝障害があります。

症状


赤血球が傷つけられることで貧血が起こり、呼吸が早くなるといった症状が見られることがあります。
そのほかに、嘔吐、食欲不振、元気消失、浮腫などの症状が見られ、重度になると昏睡することもあります。

対処法

多くの方が誤解をされるのですが、薬それぞれに「解毒薬」があるわけではありません。
もちろん中には解毒薬がある薬もありますが、特殊な殺虫剤の解毒薬など数は限られています。
では、どのように対処するのでしょう?

1経過観察

あらゆる毒物はその量によって有害な作用があるかどうか変わります。
例えば水であっても10kgの動物が100L飲んだら死んでしまうでしょう。
一方で醤油も体に良くありませんが、一回ペロっとしたくらいでは何も変わりません。
ですので、
「体格の大きい子がちょこっと人間の食べ物をつまみ食いしてしまった」
場合には経過観察を進めることもあります。

2点滴治療

毒物が体に回った時の濃度を薄める
循環(体の血の巡り)をよくして毒物が体の中に留まる時間を短くする
という目的で行います。

3催吐処置

薬を打って吐いてもらう処置です。
食べてすぐであればこの治療法を行うことができます。
ただし薬の副作用で

一時的に痙攣する可能性(私は一度も見たことがありません)
そもそも薬が効かない可能性
胃が荒れてしまう可能性(これも症状に出るのを見たことがありません)

があります。
今回は催吐処置と点滴を行い、胃が荒れるのを抑える薬を投与しました。
痙攣を起こすこともなく、ワンちゃんも元気で帰っていきました。
吐いたものの実際の写真

最後に

人のお薬は犬が届かないところに保管するようにしましょう。

また、人の判断で誤って与えてしまうことがありますが、人とワンちゃん・ネコちゃんは体のしくみが異なる部分があります。

病気を治療する際は自己判断で行わず、必ず獣医師に相談しましょう。

参考URL

https://www.anicom-sompo.co.jp/doubutsu_pedia/node/1466https://www.anicom-sompo.co.jp/doubutsu_pedia/node/1466