猫の便秘の定義

便秘は、消化管内で糞便が適切に移動しない状態を指します。
獣医学的には「規則的な排便が難しい状態」とされています。
つまり、3日に一回でもそれが規則的に出ているのであれば便秘ではないということになります。
しかし、規則的で合っても

うんちを出しづらそうな様子がある
量がまちまち

などの問題が発生している場合は私は治療対象としています。

1. 猫の便秘の原因

以下のようなさまざまな原因で発生します。

水分不足:水分が不足すると便が硬くなり、排出が難しくなります。
特にドライフードのみを与えている猫では、水分摂取が少ないため便秘になりやすいです。
また、腎臓病になると、慢性的な脱水状態になるため、便が固くなり便秘を起こすことがあります。

繊維不足:食物繊維は便の通過を助ける重要な役割を果たします。
繊維が不足すると、消化がスムーズに進まないことがあります。

運動不足
室内で飼われている猫や年齢を重ねた猫は運動量が減少し、
それが原因で腸の動きが鈍くなり便秘を引き起こすことがあります。

毛球
猫は自分で毛づくろいを行いますが、その際に飲み込んだ毛が胃や腸で固まり、便秘の原因となることがあります。
これを毛球症(ヘアボール症)と言います。

・病気や薬の副作用

糖尿病などの基礎疾患がある場合、便秘が併発することがあります。
特定の薬(例:鎮痛薬、抗ヒスタミン薬、利尿薬)の副作用として便秘が現れることがあります。

2. 猫の便秘の診断方法

便秘の診断にはいくつかのステップがあります。
飼い主が早期に異常を察知し、動物病院で適切な診断を受けることが大切です。

観察

トイレでの様子:猫がトイレで長時間踏ん張っている、鳴き声を上げる、便が出ない、
または少量しか出ない場合は便秘の可能性があります。

便の状態:硬く乾燥した便が見られる、または血液が混じっている場合は、便秘を示唆します。

獣医師による診断

動物病院では、以下のような診断が行われます:

触診:腹部を触って、腸内に便が詰まっているかを確認します。

レントゲン検査:便の詰まり具合や位置を確認し、腸閉塞や他の異常を除外します。

超音波検査:内臓の詳細な状況を把握し、便秘の原因となる異常を特定します。

3. 猫の便秘の治療法

便秘の治療は、便の詰まり具合や猫の健康状態によって異なります。早期発見と早期治療が重要です。

軽度の便秘の場合

水分補給:水をしっかり飲ませることが基本です。
ウェットフードの導入や、ウォーターファウンテンを使用することで水分摂取量を増やすことが推奨されます。

食事療法:獣医師の指示に基づいて、繊維が豊富なフードに変更することで便秘が解消されることがあります。
当院でも猫ちゃんの便秘に対応した療法食を用意しています。

ラキサトーン:ラキサトーンとは毛球除去剤として使用される油です。便の滑りをよくする作用があります。
腸内の便通をスムーズにするため、軽度の便秘には効果的です。

重度の便秘の場合

浣腸:獣医師による浣腸が必要な場合があります。
自宅での浣腸は危険を伴うため、必ず動物病院で行ってもらいましょう。

下剤:ラクトロースなどの獣医師が処方する下剤は、便を柔らかくし排出を促進します。
ただし、自己判断で市販薬を使用するのは避けてください。

外科的処置:非常に重度の便秘や腸閉塞が疑われる場合、手術(骨盤拡張術、結腸亜全摘、結腸切開)が必要になることがあります。

4. 猫の便秘の予防法

便秘を未然に防ぐための対策を日常的に取り入れることが、猫の健康を守るために重要です。

ウェットフードの導入:ドライフードからウェットフードに変更するか、
両方をバランスよく与えると、水分摂取量が増加します。

新鮮な水を提供:清潔な水を常に用意し、ウォーターファウンテンを使用することで猫の興味を引き、
水分摂取を促すことができます。

運動を促す
猫が日常的に運動できる環境を整えることも便秘予防に有効です。
猫用の遊び道具やキャットタワーを使って、体を動かす機会を増やしましょう。

• 毛球対策
毛球が原因で便秘が発生する場合、定期的なブラッシングを行い、毛づくろいで飲み込む毛の量を減らすことが予防策になります。また、毛球予防用のフードやサプリメントも活用すると効果的です。

• 定期的な健康診断
定期的に動物病院で健康診断を受け、早期に健康状態を確認することが大切です。
特に、腎臓病や糖尿病などの基礎疾患がある猫の場合は、便秘の予防や早期発見が重要です。

新しい下剤

近年人用の慢性便秘治療薬である「モビコール」も使用されるようになりました。
メリットとしては

・少ない投与量で治療が可能であること

・飲ませやすい(塩味で猫ちゃんにとってあまり不味くない)こと

・猫の使用で安全性が問題ないことがわかっていること

です。猫ちゃんの便秘が治らなくて悩んでいる方は是非ご相談ください。

まとめ

猫の便秘は軽視できない健康問題です。飼い主は、猫の便通の異常に早めに気づき、適切な対応を取ることが必要です。
便秘を予防するためには、水分摂取を増やし、適度な運動を促し、毛球の管理を行うことが有効です。
また、便秘が疑われる場合は、早めに動物病院で診察を受け、適切な治療を行いましょう。