猫の変形性関節症 (OA) についての概要

変形性関節症(OA、osteoarthritis オステオアーセトリティス)は、猫にもよく見られる慢性的な関節疾患であり、特に高齢猫に多く見られます。
猫の変形性関節症は、関節の軟骨が徐々に劣化し、関節周囲の組織に炎症を引き起こし、痛みや運動障害をもたらします。

猫における変形性関節症の発生原因

変形性関節症の主な原因は、加齢や関節の使い過ぎによるものです。
他にも、肥満、関節の先天的な異常(例:股関節の形成の異常)、外傷、感染症などが変形性関節症のリスクを高める要因となります。
これらの要因が関節に過度なストレスをかけ、結果的に関節軟骨が損傷し、炎症や痛みを引き起こします。

猫の変形性関節症の症状

猫は痛みを隠すことがある動物であるため、飼い主や獣医師が症状に気づきにくいことがあります。
しかし、以下のような兆候が見られる場合、変形性関節症を疑がわれます。

下記のリンクでは猫ちゃんの変形性関節症の症状が動画で公開されています。

https://www2.zoetis.jp/solensia-po/

  • 活動量の低下: 猫が以前よりも遊ばなくなったり、ジャンプや登り下りを避ける
  • 歩行異常: ぎこちない歩き方や足を引きずる様子が見られる
  • グルーミングの変化: 痛みにより特定の部位(特に背中や後ろ足)を舐める回数が減る
  • トイレの失敗: 痛みによりトイレの中で適切に姿勢をとることが難しくなり、トイレの外で排泄することが増える
  • 攻撃性や警戒心の増加: 痛みの影響で触られることを嫌がったり、怒りっぽくなる

診断方法

猫の変形性関節症の診断には、飼い主からの行動の変化についての詳細なヒアリングを行います。
次に、身体検査を通じて関節の可動域、痛み、腫れ、筋力低下などを評価します。
最終的な診断には、レントゲン検査などの画像診断が重要です。
これらの検査により、関節の変形や軟骨の損傷、骨棘(骨の異常な突起)の有無を確認します。

しかし猫ちゃんは緊張で痛みを隠すこともあります。
また、触られること自体を嫌がっているのか、関節を曲げられたことで痛みが出たのか、
区別がつきづらいこともあります。
12才以上の高齢猫ちゃんの90%以上がどこかしらの変形性関節症になっているという報告があるため、
「最近うちの子動きが鈍いのよね」
という飼い主さんの主観を参考に仮診断することもあります。

治療法

変形性関節症は完治しない病気ですが、症状の管理と猫の生活の質(QOL)を向上させるために様々な治療法が利用されます。治療の目的は、痛みの軽減と関節の機能を最大限に維持することです。

1. 薬物療法

痛みを軽減するために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が使用されますが、腎臓に副作用をもたらす可能性があるため猫に対する使用には慎重さが求められます。
また、痛みを緩和するために他の鎮痛薬(例:オピオイド、ガバペンチン)も処方されることがあります。
このほかにも、当院では猫の変形性関節症に対して一ヶ月に一回投与する治療薬を用意しています。

2. 体重管理

肥満は関節に過剰な負荷をかけ、変形性関節症を悪化させる要因となるため、適切な体重管理が極めて重要です。
バランスの取れた食事と、獣医師の監督のもとでの体重管理計画が推奨されます。

3. サプリメント

グルコサミンやコンドロイチンなどの関節保護サプリメントが、軟骨の健康をサポートし、関節の可動性を改善するために使用されます。また、オメガ-3脂肪酸は炎症を軽減する効果があるため、サプリメントとして利用されることが多いです。

4. 理学療法と運動療法

理学療法は、筋力を維持し関節の可動域を改善するために行われます。
低負荷の運動やマッサージ、温熱療法などを使うこともあります。

5. 外科的治療

非常に重度な場合、手術によって痛みを緩和し、関節の機能を改善することが検討されることがあります。
関節鏡視下手術や、関節の固定、さらには人工関節置換術などが選択肢となりますが、これは最後の手段として考えられます。
当院では2024年現在、変形性関節炎の治療のため外科手術を行なった症例はいません。

猫の生活環境の改善

猫の生活の質を向上させるために、飼い主さんが家庭でできる工夫も大切です。
関節に負担をかけないような工夫が必要です。

  • 段差の低減: 猫が容易にジャンプできるように、家具の高さを調整したり、段差を作ってあげることが有効です。
  • 快適な寝床の提供: 関節に優しい柔らかいベッドを用意することで、休息時の痛みを軽減できます。
  • トイレの高さ調整: 猫がトイレに出入りしやすいように、低い入り口のトイレを用意することが役立ちます。

予防と早期発見の重要性

変形性関節症を完全に防ぐことは難しいですが、リスクを減らすために飼い主さんができることがあります。
まず、若いうちから適切な体重管理とバランスの取れた食事を提供することが重要です。
また、定期的な健康診断を行い、関節の状態を早期に確認することで、変形性関節症の兆候を見逃さないことが大切です。

結論

猫の変形性関節症は進行性の病気ですが、早期の発見と適切な治療により、
痛みを緩和し生活の質を向上させることが可能です。
また、猫ちゃんは痛みを外見に表しにくい動物であるため、細かな行動の変化に注意を払い、
早期の対策を講じることが重要です。

当院では猫の変形性関節症に対して一ヶ月に一回投与する治療薬を用意しています。

https://www.zoetis.jp/species/cats/oapain/solensia/po/